日銀がタカ派に転じ、9月利上げ確率が1カ月余りで23%から82%まで急上昇しました
📌 投稿1分要約
📌 円は7月に39年ぶりの安値(1ドル=163.94円)まで下落し、米日両国は1998年以来初めてとなる共同円買い介入に踏み切りましたが、円安を完全には止められませんでした。ところが肝心の日本銀行(日銀)の9月利上げ確率は、市場価格ベースで1カ月余りのうちに23%から82%まで急上昇しています。植田和男総裁と氷見野良三副総裁が相次いで物価の上振れリスクを強調し、ロイターの調査でもエコノミストの57%が9月利上げを予想しました。高市早苗首相の積極財政路線、米国からの圧力、日銀のタカ派シグナルが絡み合う今の状況を整理します。
円は依然として1ドル=159円台の安値圏にとどまっているのに、肝心の日銀の利上げ確率は1カ月の間に3倍以上に跳ね上がりました。一見矛盾して見えるこの状況には、高市政権の積極財政路線、米国からの圧力、そして日銀執行部の姿勢の変化が複雑に絡み合っています。背景と専門家たちの見通しの違いを一緒に見ていきます。

① 39年ぶりの安値、円はなぜここまで下落したのか
7月25日のニューヨーク外国為替市場で、円/ドル相場は163.94円まで上昇し(円の価値としては39年7カ月ぶりの安値水準)、1986年12月以来の高値を記録しました。昨年10月に就任した高市早苗首相の積極財政路線が背景として挙げられます。高市政権はコロナ禍以降最大規模となる18兆3千億円規模の補正予算を編成し、投資活性化のための減税策を打ち出すなど、かつての「アベノミクス」を継承する積極的な財政政策を進めています。問題は、日本政府がすでにGDP比180%台という国家債務を抱えている点で、財政拡大が円の信認を揺さぶる要因になっているとの見方が多く聞かれます。
② 「国債はもっと買ってほしい、利上げは慎重に」 — 高市首相と日銀の思惑のズレ
高市首相は5月、植田総裁を首相官邸に招き「内閣の政策方針を理解し、適切な金融政策を実行してほしい」と要請したとされ、8月には必要な場合、国債を追加購入して長期金利の上昇を抑えてほしいと要請したと伝えられています。政府としては、急激な利上げよりも日銀による国債買い入れを通じた緩衝を期待している雰囲気です。一方、米国のベッセント財務長官は円安解消のために日銀の金融引き締めが必要だとの立場を一貫して示してきました。片方は緩和を、もう片方は引き締めを求める板挟みの中で、日銀のかじ取りはより複雑になっています。

③ 史上初の米日共同介入でも止まらなかった円安
円が39年ぶりの安値を付けたことを受け、米国と日本の両政府は先月31日、共同で円買い介入に踏み切りました。片山さつき財務相は「最近見られる円の過度な変動や無秩序な動きに対応したものだ」とし、「米国と緊密な連携を維持しながら、今後の追加的な共同介入もためらわない」と述べました。しかし市場では、肝心の日銀が同時期に政策金利を据え置いたことで、金融政策と為替介入が同じ方向を向かず、介入効果が薄れたとの指摘が出ています。介入直後に一時155円台まで戻した相場は、その後再び158~159円台に戻っています。
④ 植田総裁・氷見野副総裁が示したタカ派シグナル
先月7月31日、日銀は金融政策決定会合で政策金利を1.0%に据え置きました(政策委員9人中8人が賛成、高田創審議委員のみ利上げを主張して反対)。ただし植田総裁は記者会見で、中東情勢による原油高、AI投資拡大に伴う半導体価格の上昇、円安による耐久財価格の上昇などを物価の上振れ要因として挙げ、「これまで以上に物価の上振れリスクを意識する必要がある」と述べ、利上げの議論を「次回会合(9月)以降、丁寧に議論していく」と予告しました。
続いて8月27日、関西地方での講演に臨んだ氷見野良三副総裁は、インフレギャップが近く0に近づくとみられるとし、日銀の政策がなお幾分緩和的である以上、段階的な利上げを通じてより中立的な姿勢へ移行していくべきだと述べました。日本経済新聞は、氷見野副総裁が物価の上振れリスクについて「これまで以上に」警戒すべきだと言及したと伝えています。
⑤ 専門家たちの見立て — 9月利上げ楽観論 vs 慎重論
ブルームバーグによると、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場は8月21日時点で、日銀の9月18日の利上げ可能性を約82%織り込んでいます。7月会合直前の約23%と比べると、1カ月余りで3倍以上に高まった計算です。ロイター通信が8月17~24日にエコノミストを対象に実施した調査でも、回答者の57%が9月利上げを予想しており、1カ月前の調査で第3四半期の利上げを予想した比率が5%にすぎなかったことと比べると、雰囲気が一変したことになります。
楽観論の代表格は、足立英爾・元日銀審議委員です。同氏は9月利上げの可能性を高くみており、市場がすでに利上げを相当程度織り込んでいる以上、日銀が据え置きを選べばかえって円が急激に売られかねないと指摘しました。同氏は9月利上げの後、早ければ来年1月にも追加利上げがあり得るとの見通しも示しています。一方、大和証券の南健人チーフエコノミストは「日銀が次の利上げは9月だと明示することはないだろう」としつつも、物価の上振れリスクを強調する形で早期利上げの必要性を示唆する可能性が高いとみています。同氏は、日銀関係者が経済の不確実性や追加データ確認の必要性を繰り返し強調すれば、市場がそれを9月据え置きのシグナルと受け止める可能性もあるとしています。実際、8月17日に発表された日本の4~6月期GDP成長率(前期比0.3%)が市場予想(0.5%)を下回ったことが、利上げ判断にどう影響するかも注目点として残っています。
⑥ 逆説の日経平均 — 円安の中の史上最高値、韓国への示唆
興味深いのは、円安が続く一方で日経平均株価が4万3千円台前後で史上最高値圏を維持している点です。円安が輸出企業の海外収益を円換算ベースで押し上げる効果を生み、株式市場にとってはむしろ追い風となっているわけです。このため日銀としては、利上げによって円を防衛する選択が株式市場のラリーに水を差しかねないというジレンマも同時に抱えています。
韓国の立場からは、ウォン/円相場の動きも併せて注視する必要があります。日銀が実際に9月に利上げに踏み切り、円が反発すれば、これまで続いてきた「円安・日本旅行」のメリットはやや薄れる可能性がある一方、輸出市場で日本企業と競合する韓国企業にとっては、価格競争力の面での負担が和らぐ余地があります。
📌 知っておきたいポイント
- 82%という確率は、あくまで現時点の市場価格に反映された期待値であり、9月17~18日の会合までに発表される物価・GDP指標次第で再び大きく変わり得ます。
- 日銀関係者の発言予定(9月2日に高田審議委員、9月10日に増委員など)が相次いでおり、そのたびに円相場や日経平均のボラティリティが高まる可能性があります。
- 高市政権の積極財政路線と日銀の引き締めの試みが今後もかみ合わない場合、短期的には円の方向性を予測することがより難しくなる可能性があります。
- 円や日経平均関連の投資、あるいは日本旅行の計画がある方は、9月の日銀会合前後でボラティリティが高まり得る点を念頭に置いておくとよいでしょう。
まとめますと、円安そのものは高市政権の積極財政と米日の政策のかみ合わなさという構造的要因に起因する一方、日銀の利上げ確率急上昇は植田総裁と氷見野副総裁が相次いで示したタカ派的な姿勢の変化に起因しています。この二つの流れがいつ交わって円の方向を変えるのかが次の注目点であり、9月17~18日の日銀会合が最初の試金石となる見通しです。
参考サイト
- フィナンシャルニュース、「高市氏、日銀総裁に『国債をもっと買ってほしい』…米国は『利上げせよ』と圧力」(fnnews.com)
- フィナンシャルニュース、「日銀総裁『利上げがさらに早まる可能性も』…9月の追加利上げを示唆」(fnnews.com)
- マネートゥデイ、「日銀総裁『9月会合以降、追加利上げを本格的に議論』」(mt.co.kr)
- マネートゥデイ、「日本、3四半期連続成長、9月利上げはGo?…国債利回り30年ぶりの高水準」(mt.co.kr)
- ソウル経済、「物価圧力強まる日欧、『9月利上げ論』拡散」(sedaily.com)
- ニューシス、「元日銀審議委員『9月・来年1月の利上げを予想』」(newsis.com)
- Bloomingbit、「日本の9月利上げ期待82%に急上昇…日銀は『利上げシグナル』を出すか」(bloomingbit.io)
- 時事ジャーナル、「円が急落し米日『共同防衛』…『追加介入も辞さず』」(sisajournal.com)