公開済みの中間結果では減量幅は先行薬に届かないものの、価格と胃腸系の副作用で勝負をかける後発薬
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韓国ハンミ薬品の国産第1号の肥満症治療薬「エペ」が、10月の韓国食品医薬品安全処(MFDS)の承認取得を目指しており、承認後は1か月前後での発売を準備しています。韓国人448人を対象にした第3相試験の40週中間結果では、平均体重が9.75%減少しました。ウゴービは68週で14.9%、マンジャロは72週で15.0~20.9%の減少を示しましたが、試験の設計が異なるため直接の比較は難しいとされています。副作用は3剤とも、吐き気、嘔吐、下痢といった胃腸の症状が中心です。エペは悪心16.72%、嘔吐11.71%、下痢17.73%で、ウゴービの試験より低く観察されました。価格はまだ公表されておらず、4週間分で10万ウォン台が取り沙汰されています。現在の開始用量の4週間分は、ウゴービが21万6,000ウォン、マンジャロが27万8,000ウォンです。専門家は、選択肢の拡大と段階的な価格の安定には前向きですが、減量効果、長期データ、そして来年にも登場しうる飲む肥満症薬が変数になるとみています。
韓国の肥満症治療薬市場は昨年、8,195億ウォン規模に達し、1年で3倍以上に拡大しました。この市場の約86%をウゴービとマンジャロが占めています。そこへ、ハンミ薬品の国産第1号のGLP-1系肥満症治療薬「エペ」が参入します。10月に韓国食品医薬品安全処(MFDS)の承認が下りれば、すぐに発売準備に入る予定です。では、エペは既存薬と何が同じで、何が違うのでしょうか。効果、副作用、価格を並べて整理し、専門家の見通しまで見ていきます。なお、この記事は情報提供を目的としたものです。薬の選択や服用は、必ず医師と相談のうえで決めてください。

① エペとはどんな薬か
GLP-1は、食事のあとに腸から分泌されるホルモンです。脳の食欲中枢に働きかけて満腹感を高め、食べる量を減らします。ウゴービ、マンジャロ、エペは、いずれもこの仕組みを利用した週1回の注射薬です。エペ(一般名エフペグレナチド)はハンミ薬品が自社開発した薬で、薬の効果を長く保つ同社の持続型プラットフォーム技術「ラプスカバリー(LAPSCOVERY)」が使われています。ウゴービと同じくGLP-1受容体だけに作用する単独作動薬で、マンジャロがGIPとGLP-1の2つの受容体に作用する二重作動薬である点が異なります。
ハンミ薬品は昨年12月に製造販売承認を申請し、MFDSのグローバル革新製品迅速審査制度(GIFT)の対象に指定されて審査を受けています。2・4・6・8・10mgの5規格を、0.5mLの使い切りタイプのオートインジェクター(自動注射器)で申請しており、適応は糖尿病のない成人の肥満症患者です。具体的な開始用量と増量の間隔は、承認後に添付文書で確定します。10月に承認が下りれば1か月前後で発売する計画で、公式の目標は年内の発売です。生産は京畿道・平沢(ピョンテク)のバイオプラントで自社が担います。

② 効果の比較――どれくらい減るのか
エペの第3相試験は、糖尿病のない韓国の成人肥満症患者448人が参加した、ランダム化・二重盲検・プラセボ対照の試験です。試験全体は64週まで行う設計で、現在公表されているのは40週時点の中間結果です。有効性の解析対象446人のうち、エペ投与群の体重は平均9.75%減少し、プラセボ群は0.95%の減少でした。体重が5%以上減った患者は79.42%、10%以上は49.46%、15%以上は19.86%でした。BMI(体格指数)30未満の女性では平均12.20%減少し、解析したサブグループのなかで最も高い値でした。
比較対象のウゴービは、成人1,961人が参加したSTEP 1試験で、68週後に平均14.9%減少しました。5%以上減量した患者は86.4%、10%以上は69.1%、15%以上は50.5%でした。マンジャロは、2,539人が参加したSURMOUNT-1試験で、72週後の平均減少率が5mgで15.0%、10mgで19.5%、15mgで20.9%でした。15mg投与群では、70.6%が15%以上、56.7%が20%以上減量しました。
ただし、これらの数字をそのまま並べて優劣をつけるのは難しいところです。試験期間、対象者、設計が異なるうえ、エペはまだ中間結果だからです。キウム証券は、プラセボの効果を差し引いた基準で、エペの-8.13%(40週)とウゴービの-8.5%(アジア人対象の44週試験)を間接的に比べると、同程度だとみています。一方、嘉泉大学吉病院のキム・ギョンゴン教授は、「体重減少の目標値」という観点では、エペはウゴービやマンジャロよりも、56週で平均9.8~10.9%の減量を示した既存の経口配合肥満症薬Qsymia(フェンテルミン・トピラマート配合剤)に近い水準だと評価しました。

③ 副作用の比較――何に気をつけるべきか
3剤とも、最も多い副作用は、吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった胃腸の症状です。薬が胃の内容物が排出される速度を遅らせ、食欲や満腹感の調節に関わるためで、治療の初期や増量の時期に多く、たいていは時間とともに和らぎます。エペの韓国第3相試験(40週)では、悪心が16.72%(プラセボ5.37%)、嘔吐が11.71%(プラセボ2.01%)、下痢が17.73%(プラセボ4.7%)報告されました。ハンミ薬品は、胃腸系の副作用の発生率全体は50%で、ウゴービの試験より低いと説明しています。
ウゴービのSTEP 1試験では、悪心が44.10%(プラセボ17.40%)、嘔吐が24.58%(プラセボ6.56%)、下痢が31.47%(プラセボ15.88%)、便秘が23.35%(プラセボ9.47%)でした。マンジャロは、米FDAの承認資料で、悪心が25~29%(プラセボ8%)、嘔吐が8~13%(プラセボ2%)と報告されています。ウゴービとマンジャロを直接比べた72週のSURMOUNT-5試験では、治療の中止率がマンジャロ6.1%、ウゴービ8.0%で、胃腸症状による中止率はそれぞれ2.7%と5.6%でした。ただし、エペとウゴービの数値は別々の試験の結果なので、安全性の優劣を断定することはできません。また、エペの便秘などほかの有害事象や長期の安全性に関する資料は、まだ十分には公開されていません。
GLP-1系の薬に共通して注意が呼びかけられている項目もあります。胆石と胆嚢炎は、ウゴービの試験で胆石症1.6%(プラセボ0.7%)、胆嚢炎0.6%(プラセボ0.2%)、マンジャロで胆石症1.1%(プラセボ1.0%)、胆嚢炎0.7%(プラセボ0.2%)と報告されました。急性膵炎については、約6万6,000人を対象にした大規模研究で、GLP-1系の肥満症注射薬の使用群で発生リスクがわずかに高い結果が出ました。ただ、薬が膵臓を直接傷つけるという明確な因果関係の根拠はまだ乏しく、急激な体重減少に伴う副次的な結果かもしれないという分析も出ています。嘔吐や下痢で脱水が重くなると急性腎障害につながりうるという警告も、韓国のマンジャロの使用上の注意に盛り込まれています。こうした項目別の数値は、エペについてはまだ詳しく公開されていないため、承認後に添付文書を確認する必要があります。MFDSは、こうしたGLP-1系の肥満症薬を「乱用・誤用が懸念される医薬品」に指定する手続きを進めています。

④ 価格・供給――なぜ「価格」が勝負どころなのか
韓国では、肥満症治療薬は健康保険が適用されない保険適用外の薬で、患者が薬代を全額負担します。ソウル市内の薬局ベースで、1か月の費用はウゴービが20~40万ウォン台、マンジャロが30~70万ウォン台です。開始用量の4週間分の出荷価格は、ウゴービ(0.25mg)が21万6,000ウォン、マンジャロ(2.5mg)が27万8,000ウォンです。ハンミ薬品はエペの供給価格を公表していませんが、業界では4週間分で10万ウォン台が取り沙汰されています。自社生産によって原価と流通コストを抑えられることが根拠です。
変数は、先行薬の対応です。ウゴービは、マンジャロの韓国発売を前に、開始用量の供給価格を37万2,000ウォンから21万6,000ウォンへ約42%引き下げた前例があります。エペが登場すれば、今回も価格競争が起きる可能性が指摘されています。供給面では、国内生産が強みとされています。ウゴービとマンジャロは、韓国での発売後、高い需要で一部の用量が品切れになりましたが、ハンミ薬品は自社の生産体制で需給の変化に柔軟に対応する計画です。
⑤ 3剤を一目で比較
ここまでの内容を表にまとめました。臨床結果は別々の試験の数値なので、参考程度にご覧ください。
| 区分 | エペ | ウゴービ | マンジャロ |
|---|---|---|---|
| 成分(メーカー) | エフペグレナチド(ハンミ薬品) | セマグルチド(ノボ ノルディスク) | チルゼパチド(イーライリリー) |
| 作用の仕組み | GLP-1単独 | GLP-1単独 | GIP・GLP-1の二重 |
| 投与 | 週1回(オートインジェクターで申請) | 週1回 | 週1回 |
| 代表的な試験での体重減少 | 韓国第3相・40週(中間)9.75% | STEP 1・68週 14.9% | SURMOUNT-1・72週 15.0~20.9% |
| 悪心・嘔吐・下痢 | 16.72%・11.71%・17.73% | 44.10%・24.58%・31.47%(STEP 1) | 悪心25~29%、嘔吐8~13%(FDA資料) |
| 開始用量の4週間分の価格 | 未定(10万ウォン台が取り沙汰) | 21万6,000ウォン | 27万8,000ウォン |
| 生産 | 国内(平沢) | 輸入 | 輸入 |
| 強み | 価格競争力への期待、国内生産、韓国人対象の第3相、低く観察された胃腸系の副作用 | 最も早く発売されて蓄積した処方実績、心血管イベント減少を示す研究の裏づけ | 最も大きい減量幅、ウゴービとの直接比較で低かった治療中止率 |
| 弱み | 中間結果ベースで小さい減量幅、長期データと処方実績の不足 | マンジャロに比べ小さい減量幅、処方シェアの低下 | 最も高い価格帯、初期の悪心・嘔吐が強く出る場合がある |
⑥ 専門家はどう見ているか
まず臨床現場の見方です。キム教授は、薬代が高く、本当に治療が必要な患者がなかなか薬を使えない状況で、新薬が処方の選択肢を広げてくれる点は前向きに評価できるとしました。ただし、今回の発売がすぐに輸入肥満症薬の値下げにつながるとは考えにくく、長期的には治療薬の種類が増えて競争が促されるなかで、段階的な価格の安定が期待できると見通しました。製薬業界の関係者も、エペには価格と韓国人患者対象の臨床データという差別化要素があるものの、ウゴービとマンジャロは高い知名度と処方実績を持っているため、実際の診療現場で医師と患者の選択をどこまで変えられるかがカギだとみています。
証券業界は比較的前向きです。ハンミ薬品はエペの2027年の売上ガイダンスとして1,000億ウォン程度を示しており、KB証券のシン・ジフン研究員は、韓国の肥満症治療薬市場の急成長を考えれば、ガイダンスの超過達成も可能だと分析しました。業界では、勝負手はやはり価格競争力であり、平沢バイオプラントの稼働率を引き上げて大量生産によるコスト削減力を示せるかどうかが、企業価値の再評価の重要な基準になるという見方もあります。
最大の外部変数は「飲む肥満症薬」です。ノボ ノルディスクの経口セマグルチド(ウゴービの飲み薬)とイーライリリーのFoundayo(オルフォルグリプロン)は、すでにMFDSに製造販売承認を申請しており、業界は来年の韓国発売が可能だとみています。経口薬は一般に注射薬より価格が低く、価格競争が一段と熱を帯びる可能性があります。市場の順位がいつでもひっくり返りうる点にも注目です。後発だったマンジャロは、韓国でウゴービを追い抜き、今年6月時点の処方シェアは約9対1まで開きました。
ハンミ薬品は、エペ以降のロードマップも示しています。後続のパイプラインは、筋肉増加型の肥満症治療薬HM17321と、GLP-1・GIP・グルカゴンの3つの受容体に同時に作用する三重作動薬HM15275です。HM15275は米国で第2相試験を進めており、2027年上半期の終了が見込まれ、製品化の目標時期は2030年です。エペで市場シェアと医療関係者との接点を確保しておけば、次世代薬を出すときに既存の営業・マーケティング基盤を活用できるという分析です。
知っておきたいポイント
- エペはまだ承認前です。承認の時期、発売日、価格は確定しておらず、10万ウォン台という価格も、業界の観測にとどまります。
- 別々の臨床試験の体重減少率や副作用の発生率を、そのまま比べて薬の優劣を判断すると、誤解を招くおそれがあります。エペの公表数値は、40週時点の中間結果です。
- 肥満症治療薬は、医師の診断と処方が必要な医療用医薬品です。服用するかどうか、用量をどうするかは、ご自身の健康状態に合わせて医療者と相談して決めてください。
- 激しい腹痛や、繰り返す嘔吐で水も飲めない、高熱や黄疸が出るといった場合は、よくある副作用と軽く考えず、すぐに受診してください。
- 飲む肥満症薬の発売などで、薬価や市場の構図が急に変わる可能性があります。最新の情報を確認するようにしましょう。
まとめると、エペは減量幅で先行薬を追い越そうとする薬ではなく、価格、安定した供給、韓国人対象のデータ、相対的に低く観察された胃腸系の副作用で、市場のすき間を突こうとする薬です。成否は、最終的な64週の結果、実際の処方現場での評価、そして最終的な供給価格にかかっています。そこに、ウゴービ・マンジャロの価格面での対応と、飲む肥満症薬の登場まで重なれば、来年以降の韓国の肥満症治療薬市場は、今よりはるかに複雑な競争構図になりそうです。患者にとっては、選択肢が広がる分、効果、副作用、費用をあわせて医療者と相談することが大切です。
参考サイト
- ニュースピム – “위고비·마운자로 86% 장악…한미약품 ‘에페’ 가격으로 틈새 공략” (newspim.com)
- ハイドク – “국산 1호 GLP-1 비만약 나온다…한미 ‘에페’ 연내 출시 목표” (news.hidoc.co.kr)
- マネートゥデイ – “비만약 더 싸진다…경구용·한미 ‘에페’ 출시 대기” (mt.co.kr)
- アジアトゥデイ – “비만약 ‘에페’ 출시 앞둔 한미약품… 수율·원가절감 관건” (asiatoday.co.kr)
- ウーマンセンス – “위고비·마운자로 열풍…놓치면 안 되는 부작용 6가지” (womansense.co.kr)
- ビズウォッチ – “먹는 비만약 국내 상륙 초읽기…파운다요·위고비필 ‘격돌’” (news.bizwatch.co.kr)
- ClinicalTrials.gov – “STEP 1: Research Study Investigating How Well Semaglutide Works in People Suffering From Overweight or Obesity” (clinicaltrials.gov)